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Alpine Square / アルパイン広場

【今日の名峰】 ポーランド最高峰 リシィ山(2,499m)

【今日の名峰】 ポーランド最高峰 リシィ山(2,499m)

ポーランド登山者の心の故郷、タトラ山脈

東欧のポーランドは、日本から九州と四国を引いたほどの面積です。北はバルト海やロシアの飛び地、東にベラルーシやウクライナなど、南にチェコとスロバキア、西にドイツと面する国です。国名の「ポーラン」は“平原”を意味する「ポーレ」が語源と言われるように、大部分は平坦な土地がひろがる国なのですが、南部の国境沿いにかけてタトラ山脈が横たわります。標高こそ3,000mより低い山岳地帯ながら、アルプスを思わせる荒々しい岩壁群と冬の厳しい気候から、昔からポーランド人クライマーを育んだ道場としても知られます。ポーランド出身の登山家といえば世界最短(当時)での8,000m峰全14座完登イエジ・ククチカ、数々の難峰の困難なルートを初登し山野井泰史さんとも親交のあるヴォイテク・クルティカなど枚挙にいとまがありません。とくに、条件が格段に厳しくなる冬の登山記録に優れており、最近も8,000mのうち唯一冬に登られていないK2(8,611m)へ冬季登山隊を送るなどポーランド人登山家の活躍は世界的に知られます。綺羅星のごとく輝く著名な登山家も、キャリアの初めにはタトラ山脈で岩登りの腕を磨いてから、アルプスやヒマラヤ、アンデスなど世界の著名な山岳エリアへ羽ばたいていったのです。

タトラ山脈の稜線を歩くタトラ山脈の稜線を歩く

リシィ山を登る

そんなポーランド人の熱い魂に想いを馳せつつ登ることが出来るのが、ポーランド最高峰リシィ山(2,499m)です。ちょうどポーランドとスロバキアの国境にピークが位置しており、ポーランド側、スロバキア側どちらからでも登ることができます。私が事前踏査したときにはポーランド側から登りましたが、体力のあるポーランド人たちが日本の大キレットにも似た岩場をがしがしと登っていくようなルートで団体には不向きでしたので、皆さまに参加いただく山旅ではより安全なスロバキア側から山頂を目指します。リシィ山は日本人にとっての富士山と同じように現地の人々は「一生に一度は登りたい」と考える人が多いそうです。山麓の山小屋から徐々に登っていくとやがて稜線に飛び出し、山上湖が点在する雄大なポーランド側の風景を楽しみましょう。ここから山頂まではガレ場が続きますので慎重に登ります。山頂では親日家が多いと言われるポーランド人登山者と一緒に日本流の万歳でお祝いしましょう!

リシィ山頂上直下を登るリシィ山頂上直下を登る

おすすめしたい一冊

最後に2019年に邦訳が出版されたポーランド人登山家ヴォイテク・クルティカの評伝をご紹介します。たんなる登山記録にとどまらず、創造性、リスク、自由、芸術などについてクルティカの深い思索を辿ることができる一冊で、先鋭的な登山に興味のない方も興味深く読めるのではないかと思います。時間ができた、いまこそお勧めの一冊です。翻訳者の恩田さんは自身もヒマラヤ遠征を行いクライマーとして活躍されている方です。

『アート・オブ・フリーダム 稀代のクライマー、ヴォイテク・クルティカの登攀と人生』
ベルナデット・マクドナルド著、恩田真砂美 訳 山と渓谷社
注文はこちらから(山と渓谷社サイト)

登山家ヴォイテク・クルティカの評伝登山家ヴォイテク・クルティカの評伝