Alpine Square / アルパイン広場
タスマニア島 オーバーランド・トラック 10日間
アップルアイランド、タスマニア
オーストラリア大陸南東から南に約340kmに位置する人口約50万人のタスマニア島。りんごの形に似ていることからアップルアイランドとの愛称で親しまれています。タスマニアは空気が大変きれいな場所としても知られており、雨水をそのまま飲むことができるほどです。「クラウドジュース」という雨水をペットボトルにそのまま入れた水が販売されています。植生も豊富でキングビリーパインやセロリトップパインなどの針葉樹、南極ブナや数えきれないほど多種にわたるユーカリの他、南半球ならではの珍しい花々を見ることができます。個人的には世界最大のヒースと呼ばれる「パンダニ」という植物が私のお気に入りです。世界遺産に登録されている「タスマニア原生地域」では冷温帯雨林の原生林、すぐ横に流れ落ちる滝、すぐ近くに姿を見せる野生動物など、多彩な自然を目にすることができます。今回のツアーの目的はその原生地域を北から南に縦断する「タスマニア島 オーバーランド・トラック65Km」をプライベート・ロッジに宿泊しながら5泊6日で踏破する壮大な山旅です。
雨水のペットボトルCLOUD JUICE
タスマニア島 オーバーランド・トラックのプライベートロッジについて
オーバーランド・トラックは一般のトレッカーが宿泊するパブリックロッジの他に、プライベートロッジと呼ばれる貸切タイプのものがあります。わたしたちはそのプライベートロッジに宿泊しました。ロッジ内部にはシャワーが付いており、乾燥室もあるため、洗濯をして翌日のトレッキングまでに乾かすことができます。食事はガイドが3食(昼食はサンドウィッチを自分で作ります)とも用意してくれます。寝室はどの小屋もツインルームで内部にはベッドとシュラフが用意されています。ポーターがいないため、5泊6日の荷物を全て持って歩かなければいけませんが、上記のような設備が整っているためだいたい7~8Kgにおさえることができます。ガイドが作る食事は大変おいしく、パンなども粉をこねるところから作る本格的なものです。宿泊者は私たちしかいないため、完全に貸切状態です。リビングやテラスでくつろいだり、ロッジに保管してあるタスマニア産のおいしいワインをたしなみながら談笑したり、プライベートだからこそ味わえる山小屋ライフを楽しみました。
ロッジ内リビングルームにて
タスマニア島 オーバーランド・トラックへ出発!
スタート地点はワルドハイム小屋という、タスマニア原生地域開拓のパイオニア的存在の山小屋から始まります。現在は展示小屋になっていますが、歴史を感じさせる雰囲気が漂っていました。歩きだしはボタングラスと呼ばれるイネ科の植物が一面に広がる湿地帯です。整備された木道を歩きます。所々にクリーク(小川)が流れており、その水はボタングラスから染み出すタンニンのせいで茶色になっています。現地のガイドが「ここの水はそのままのめるんだよ」という声に皆さんもびっくり。クレーターレイクでは現地のガイドが水浴びをはじめました。水温は10℃を下回っています。私もチャレンジしようと思いましたが、さすがに諦めました。ここから約200mほどの登りを経て、マリオンズルックアウトへ。目の前にタスマニアの盟主クレイドルマウンテンが聳えており、歓声があがりました。ここからは景観ががらりと変わり、クレイドルマウンテン直下の美しい柱状節理を眺め、特異な形をしたバーンブラフなどを遠望しながら初日の山小屋「バーンブラフロッジ」へ。翌日もボタングラスの広がる湿原を歩きます。12月のオーバーランドトラックは花のベストシーズンで、一面に咲き誇るバウエラ(ユキノシタ科の白い花)群落、ローズマリー、スコパリア、ピメレアの花々と、点在するスノーガムと呼ばれるユーカリとのコントラストがすばらしいです。ウィンダミア湖でランチ後、2日目の山小屋「パインフォレストロッジ」へ。
ボタングラスの湿原を歩く
タスマニア オーバーランド・トラック3日目~4日目
3日目は右手にMt.ぺリオンウェスト、左手にMt.オークリーの雄々しい岩峰を眺めながらスタート。今日はフォースバレー内のフロッグフラッツと呼ばれるオーバーランドの最低標高部(約720m)まで1度下ります。ブナやパインツリー(スギ科やマキ科※タスマニアではパインは松でなく、針葉樹全体を意味する)の森を歩き、昔の黄銅鉱跡を見学したり、河原で化石を探したり、大自然を満喫しながら明日に備えます。夕食はピザ。自分の好きな具材を乗せオーブンで焼きました。4日目はいよいよタスマニアの最高峰「Mt.オッサ(1617m)」の登頂日です。ぺリオンギャップという峠まで標高差約250mを緩やかに登ります。、ここで不要な荷物を置き本線を離れ、サブトラックに入り、往復約4時間30分の岩稜歩きが始まります。標高が上がるにつれ、一面の大地に点在する岩稜の山々が見え始め、タスマニアの大自然を実感できます。所々手を使うような場所も現れ、慎重に一歩一歩登りました。途中、ハリモグラに遭遇、かわいいお尻を出して一生懸命穴を掘っていました。天気もなんとかもち全員無事登頂!遠くにはトレッキング初日に眺めたクレイドルマウンテンも遠望できました。ぺリオンギャップまで1度戻り、「キアオラハット」へ。下山中に雨が降り始め、気温も下がってきました。この時期のタスマニアは日中晴れていればTシャツで歩けますが、朝夕や降雨時はフリースが必要です。予備で薄手のダウンジャケットを持参しておくこともおすすめします。
Mt.オッサの登り
タスマニア オーバーランド・トラック5日目~6日目
5日目、昨日のMt.オッサ登頂日の岩稜帯とはがらりと景観を変え、今日は冷温帯雨林歩きです。パインツリーやユーカリ、コケや地衣類に包まれた原生林で1人1人間隔を空け、「クワイエットウォーク」と呼ばれる1人きりで静かに歩く体験を楽しみました。「海外の山を1人で歩くことなんてなかったからとても感動した」という声があがりました。樹林帯の所々ではタスマニア・ワラタというシンボル的な存在の真っ赤な花が満開でした。ワラタはヤマモガシ科の花で日本では八重山諸島などの一部南国で同じ科の花が咲きます。山小屋5泊目の最終日、「ウィンディリッジ小屋」では参加者の方々からの感想を聞き、いよいよ明日でオーバーランド・トラックが終わってしまうのか~、という実感がわいてきます。この夜はヘッドランプを点けて、ウォンバットやワラビ―などの夜行性動物を探しにでかけました。6日目、氷河によって削られた樹林帯の谷筋を約3時間程歩き、ゴールのレイクセントクレア湖のナルシサスベイへ。無事全員が全長65Kmのオーバーランド・トラックを完歩することができました。湖畔にはテーブルマウンテンのようなMt.オリンパスが鎮座しています。船に乗って対岸のシンシアベイへ移動し、5泊6日の山旅の終了です。現地ガイドとの別れを惜しみ、タスマニアの州都ホバートへと向かいました。私のタスマニア オーバーランド・トラックのおすすめポイントは毎日劇的に変化する大自然の景観と、貸切ロッジで過ごす家族的な雰囲気です。今後2月~3月はシーズンでもっとも雨の少ない時期を迎えます。まだ訪れたことのない方はぜひこの機会にご検討ください!
タスマニアンワラタの花