世界の山旅を手がけて49年 アルパインツアー

海外・国内のハイキング、トレッキング、登山ツアーのアルパインツアーサービスです。

お問い合わせ

facebook twitter

Alpine Square / アルパイン広場

3月10日出発「花のキプロス島 フラワー・ハイキング 8日間」

3月10日出発「花のキプロス島 フラワー・ハイキング 8日間」

先日、春爛漫のキプロス島より帰国いたしました。 キプロスは、トルコの南、東地中海に浮かぶ島国で、四国の半分ほどの大きさです。この時期のキプロスは穏やかな陽気に包まれ、様々な花が咲き誇り、一足早く春を満喫することができました。クラウンデイジー(春菊)やマスタードがあちこちに群生し、見渡す限り黄色い大地が広がっている光景には目を奪われました。花の種類も豊富で固有種も多いため、フラワー・ハイキングには最適の場所です。また、地理的に恵まれた位置にあるため、古くからヨーロッパ、アジア、アフリカを結ぶ継地として重要な役割を果たしてきました。歴史的にも非常に古く、9,000年以上前にギリシア系の民族が多く移民したことに起源を発しています。ギリシア神話の舞台にもなり、愛と美の女神ヴィーナスが誕生したのも、キプロスの海岸です。お花あり、歴史あり、ローマ時代の遺跡やビザンチン時代の教会ありと見どころ満載のキプロスは、一度では味わい尽くせない魅力に溢れていました。

雌蜂に擬態したオフリスラン雌蜂に擬態したオフリスラン

多様な花々と地中海の美しさに魅せられる

数あるハイキングの中でもアカマス半島は、地中海の美しい海と多様なお花が同時に楽しめるおすすめのコースです。息を上げながら標高300mほど登り詰め、ふと後ろを振り返ると、青く透き通る美しい地中海が広がっていて思わず歓声が上がりました。足元に目を移すと、シクラメンやポピー、固有種のチューリップが「私も見て!」と言わんばかりに咲いていて、疲れを吹き飛ばしてくれました。他にも、雌蜂に似せた花をつけて雄をおびき寄せ、花粉を運んでもらうよう進化を遂げたオフリスランはとても興味深く、皆さま熱心に観察されていました。小指の爪ほどの小さなお花にもかかわらず、繊毛や質感まで雌蜂に似せようと様々な工夫があり、見ていて飽きることがありません。なんと、におい物質まで雌蜂に似せているものもあるというから驚きです。ローマ時代のモザイクがよく残るパフォスの歴史地区には、黄色の絨毯を敷いたようにクラウンデイジーが咲き誇り、遺跡と青い海、お花が見事に調和した美しい風景を堪能することができました。まさに花盛りのキプロスをあちこちで堪能することができました。

振り返ると地中海の絶景が広がる振り返ると地中海の絶景が広がる

重厚な文化に彩られたキプロスの世界遺産

多くの民族が行き交ったキプロス島は、様々な文化が幾重にも重なっています。キプロスにある3つの世界遺産のうち、今回の山旅では2つの世界遺産を訪れました。島の南西部の海岸に位置するパフォスは紀元前3世紀から紀元後3世紀まで首都が置かれていたため、ローマ時代の栄華をうかがい知る素晴らしい遺跡が残っています。特に、小さな石やガラスを敷き詰めて作られた床のモザイクは見事で、気の遠くなるような細かい作業に感激せずにはいられませんでした。何百年経った今でも、色褪せることなく鮮やかなモザイクに、ただただ見とれてしまいました。また、中央部にあるトロドス山塊には、ビザンチン時代に建てられ、素晴らしいフラスコ画が残っている9つの教会群が世界遺産に指定されています。海からの侵略から逃れるように山岳地帯に逃げ込み、ひっそりと建てた教会は、一般家屋のような素朴な外観です。ところが一歩中に入ると、聖書の場面を描いた色鮮やかなフレスコ画が残っており見る者を圧倒します(内部は写真撮影禁止なのでお見せ出来ないのが残念です!)。トロドス山塊では、いくつもの峠を越えながら、アーモンドや桃、りんごが花をつけ、レモンやオリーブの実がたわわになる山岳地帯の素朴な雰囲気を楽しみました。

鮮やかな色が残るパフォスのモザイク鮮やかな色が残るパフォスのモザイク

北キプロスを訪問

「キプロス問題」に象徴されるように、現在キプロスは東西80kmに渡って緩衝地帯「グリーンライン」が引かれ、南北に2分されています。これまで述べたエリアはいずれも南部で、こちらにはギリシア系住民が暮らし、ギリシアの田舎町のような雰囲気が広がります。一方の北部は、トルコ系住民が暮らし、イスラム系社会が広がっています。かつて教会として使われていた壮大なゴシック建築も、現在は内部のみが改造されてモスクとして利用され、教会の鐘楼から礼拝のアザーンが鳴り響く不思議な光景に出会います。かつては、北キプロスへの旅行は制限されていましたが、今では日帰りであれば北キプロスへ行けるようになりました。グリーンラインを自由に往来している人々の姿を見ると、比較的自由に両地域間の交流があることを実感し、私たちが想像していた以上に友好的な交流が行われているようにも感じました。北キプロスへの訪問は、小国でありながら、複雑な民族問題を抱えるキプロス島の素顔に触れる時間となりました。

教会がモスクに改装されたソフィア聖堂教会がモスクに改装されたソフィア聖堂