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2014/12/10 お知らせ

“創業45年の足跡をたどって”〈ツアーリーダー編〉トレッキングの現場を支える、頼りがいのある笑顔。

Newsletter 2014年12月号
平成26年11月10日 第365号
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文:黒 川 惠  (くろかわ さとし)
アルパインツアーサービス会長

 

〈ツアーリーダー編

“添乗員”に代わる呼称の登場

 1964年の海外旅行自由化によって日本人の海外観光旅行は、まずパッケージツアーから始まった。かつての日本人団体ツーリストの漫画的印象は、旗を掲げた添乗員の後にメガネをかけて、航空会社のショルダーバッグを肩にした一団であった。当時添乗員の存在感は圧倒的だったのである。とにかく初めての海外の旅では頼りにできるのは添乗員だったからである。
 我が社の社員はもともと挑戦的な海外実体験を持ちながら入社してきた者たちが多いから、添乗員同行の旅の経験者など皆無だった。それも登山やトレッキングに特化していたわけだから、そうしたツアーの運行も登山パーティーにおけるリーダーシップとメンバーシップがまず念頭におかれていた。とはいっても決して、高校・大学山岳部や社会人山岳会のような縦社会をイメージするものではなかった。当然サービス提供者とお客さまの関係の上に成り立つリーダーシップの具現化をめざしたのである。
 そこで我が社は30数年前から、日本で初めて、“添乗員”に代えて、“ツアーリーダー”の呼称を用いることとした。パーティーの安心と安全を実現させるのは、リーダーの役目だからである。ツアーリーダーと呼称されても、サービス提供者としてのホスピタリティーは観光旅行の添乗員を凌ぐと自負している。

身は足軽のごとく

 観光バスの“添え乗り”を想起するような“添乗”ということばでは言い表すことが難しい、山中行動のサポートと山の仲間としてのチームワークを醸し出すことがツアーリーダーの重要な職務である。それに加えて、添乗業務も滞りなく進める力量がなければこの仕事はつとまらない。ツアーリーダーの心構えとして掲げている教えは、「気は大納言のごとく、身は足軽のごとし。」である。プロとしての気位を失わず、顧客のために身を粉にして働こう、といった意味あいであるが、その覚悟を決めた者たちが我が社のツアーリーダーである。だから、お客さまには、どうか安心して世界の山旅を心ゆくまでお楽しみいただきたい。

還らざる者たち

 専任ツアーリーダーの多くは、山が職場である。1年の半分をツアーリーダーや山岳ガイド業務で家を留守にしている者もいる。社員の中でも年間80日以上をツアーリーダーとして山旅に出ている者がいる。とくに専任の者たちには、プロ登山家ともいえる者がいる。「山でメシが食えるのか。」とさんざん言われながら、やっとここまでやってきた我が社を支えるツアーリーダーたちこそ、山でメシを食っているプロである。そんな中で、山から帰ってこなかった者たちがいる。たった二人で登ったエベレストから戻らなかった二上純一、マウントクックの難ルートから戻らなかった池之内潔、この9月にマナスルで落命した佐々木慶正・・・。まさか、あいつが、とそのたびに痛惜の念にかられてきた。
 いつかある日、山で死んだら、古い山の友よ、伝えてくれ、とロジェ・デュプラの詩そのままに言われているような思いがぬぐいきれないでいる。

山旅づくりの中枢を貫く

 インターネットで航空便とホテルを予約し、行きたい所だけを気ままに旅する個人旅行がどんどん増えている。日本の旅行業界はいまこうしたWEBツーリストの取り込みに工夫をこらそうとしている。まさに旅行素材だけを提供する、スケルトン(骸骨)作戦である。で、我が社はどうか、というと「山旅」の素材だけを提供することは不可能だから、山仲間や山岳会のグループの方々には、できるだけご要望にそった形態での受注型企画旅行(顧客の要望に合わせて日程を組むツアー)として取り組ませていただいている。最近はそれが実に好評なのである。(ちょっと手前味噌)
 募集型企画旅行(ツアーカタログなどで広く一般募集するツアー)の我が社の山旅は、ツアーリーダーが同行することで、安心・安全運行をお約束している。フル・パックだからといって意外に不自由なことはなく、むしろ団体観光旅行のようにバスでホテルに着いて、部屋のドアを閉めたら皆他人、といったよそよそしい雰囲気はない。それはご参加者全員が山好きで心底から山旅を楽しもうとされているからだ。
 その楽しみの裏方として、縁の下の力持ちを自認する笑顔のツアーリーダーがいる。まさに海外旅行自由化で活躍した頼りがいのある添乗員そのものだと思っていただけるだろう。ツアーリーダー業務の心髄は、日本の海外旅行の根底にある、もてなしの心そのものだと言ってもいいと思う。
 頼りがいのある笑顔のツアーリーダーが同行する山旅を、これからもご愛顧いただきますよう、心からお願いを申しあげ、この連載をいったん終了とさせていただきます。新たな連載にご期待ください。